以下の患者さんは留置ができない、または手術を延期する可能性があります。
担当医とよく相談し、治療方針を検討する必要があります。

1. 抗凝固療剤を「非弁膜症性心房細動以外の目的」で内服されている方
   • 僧帽弁狭窄症
   • 心臓手術後で機械弁留置後
   • 深部静脈血栓症や慢性肺塞栓症
   • 心室瘤などの左室側の病気
2. 抗血小板療法が禁忌、または何らかの理由で内服できない方
3. 活動性の出血が継続していたり、脳梗塞や塞栓症の急性期の場合（それらが安定するまでは留置できません）
4. 術前の経食道エコー検査で、解剖学的に留置不適合の方
   • 左心耳内に血栓が存在している場合（溶けるまでは留置できません）
   • 左心耳のサイズがデバイス規定以上に大きい場合、または小さい場合
   • 重篤な弁疾患などがありそちらの加療を優先する場合やそれ以外の理由で解剖的にWATCHMAN留置が困難な場合

一週間以内の入院が必要になります。手術前日または前々日に入院頂き、手術数日後の心臓超音波検査と、カテーテル穿刺部位に問題なければ退院です。手技から約一か月半後に外来で経食道心エコー検査を行い、WATCHMANが問題なく左心耳を閉鎖しているかを確認してから、内服薬の変更を行います。

医学的には、抗凝固療法の種類にもよりますが、WATCHMANを入れることで、抗凝固剤の内服を中止できるため、将来に渡って明らかに出血の危険が減ります。さらにWATCHMANは左心耳を直接閉鎖するため、脳梗塞の発症低下も期待できます。
ただし血液のサラサラ薬は抗凝固薬だけではなく、病気によっては他に、抗血小板薬が必要な患者さんもおられます。さらに上述のように、WATCHMAN留置後、WATCHMANが内皮で覆われるまでは、しばらく血栓予防のために、抗血小板薬を内服する必要があります。したがって、病状に応じて、出血や梗塞の予防のため、担当医と相談し、他の内服薬との調整も必要になります。
一方、経済的には、直接経口抗凝固薬(DOAC) の場合、お薬代は、一割負担、二割負担、三割負担の患者さんで年間それぞれ約18,871円、37,741円、56,611円となります。一回のWATCHMANにかかる入院費用を考慮に入れて、患者さんそれぞれ、ご家族ともよく相談する必要があります。

交換時期はありません。一度留置したら生涯、取り出して新しいものに取り換える必要はありません。数か月で内皮に覆われますが、その間は血栓が付着しないように、抗血小板薬を２剤継続する必要があります。ただし内服期間に関しては患者さんの病状により臨機応変に対応しますので担当医と相談ください。

WATCHMANによる治療の平均的な費用（部屋代や食事代等は含まれません）

お支払いが負担となった場合は、あとから申請いただくことにより自己負担限度額を超えた額が払い戻される「高額療養制度」があります。
しかし、あとから払い戻されるとはいえ、一時的な支払いは大きな負担になります。その際は「限度額認定証」を保険証と併せてお会計窓口に提示いただくと、窓口でのお支払いが自己負担限度額まで軽減されます。
これら制度についての詳細はこちらをご覧ください。

※1【低所得者Ⅱ】：世帯員全員が①市町村民税非課税者、又は②生活保護法の要介護者であって、自己負担限度額・食事標準負担額の減額により保護が必要でなくなる者
※2【低所得者Ⅰ】：世帯員全員が「低所得者Ⅱ」に該当し、さらにその世帯所得が一定基準以下

以下の合併症が稀ですが生じることがあります。担当医とよく相談の上、納得して治療を受けることが必要です。

心臓タンポナーデ

カテーテルを挿入したりWATCHMANを留置する際に心臓の組織が損傷し、心臓の周囲に血液が溜まり、血圧低下が生じる合併症です。心臓と心膜の間へチューブを挿入する心嚢穿刺を行います。改善しなければ心臓手術に移行することもあります。

WATCHMAN の脱落

WATCHMANが左心耳から外れてしまう場合は回収を試みます。回収できなければ心臓外科手術を行う場合もあります。

出血合併症

WATCHMAN留置後は、抗凝固薬に比較し、将来に渡って、出血と脳梗塞予防に効果があります。しかしWATCHMANが内皮でおおわれるまでは、血栓付着とそれによる脳梗塞を予防するため、最初の約45日間は、内服中の抗凝固療法に加え、アスピリンなどの抗血小板薬を一剤、併用します。45日以降は抗血小板薬を二剤に変更し、約6か月内服します。WATCHMAN留置後の約6か月間は、抗凝固療法と比較して、出血性合併症は同程度と臨床研究では報告されてはいますが、特に出血リスクの高い患者さんによっては、出血性合併症を起こしてしまう場合もございます。したがってこの最初の6か月間は、特に厳重に経過を追わせていただきます。約6か月以降は、バイアスピリン単剤に移行できますので、将来に渡って、出血性合併症は明らかに低減できます。

WATCHMANへの血栓付着、脳梗塞（空気塞栓、血栓）

手術中に留置用のカテーテルやWATCHMANに血栓や空気が生じることで塞栓を引き起こし、脳梗塞が生じることがあります。また上述のように、数か月経過してからWATCHMAN に血栓の付着が認めら、脳梗塞の原因になることがあります。その際は抗凝固薬の中止はできず、新たな抗血栓薬の併用を行うこともあります。