前立腺治療センター

国内でも有数の最新技術をとりそろえ、身体への負担が少ない治療をめざします。

 

前⽴腺疾患の診断から治療まで

前⽴腺治療センターの役割

⾝体への負担の少ない「低侵襲医療」を柱として、前⽴腺疾患の診断から治療までの
すべてをお引き受けするのが「前⽴腺治療センター」の役割です。

先進医療を可能にする技術と設備

安全性、確実性の高い⼿術を可能にする⼿術⽀援ロボット「ダビンチXi」を⽤いた腹腔(ふくくう)鏡下⼿術、病巣にピンポイント照射できるロボット型放射線装置「サイバーナイフ」を⽤いた放射線治療、体内に小さな放射線源を埋め込んで放射線治療を行う「密封⼩線源治療」を3本柱としております。これらの先端医療を導⼊することにより、合併症などがあり⼿術に不安をお持ちの患者さんやご⾼齢の患者さんなどにも治療の選択肢が⼤きく広がり、患者さん⼀⼈ひとりに合わせたオーダーメードな治療を提供することが可能となっています。

低侵襲医療
「侵襲」とは、医療⾏為などで「⾝体を傷つけること」を広く意味する医学⽤語です。とくに⼿術は、切開により⾝体に⼤きな傷ができてしまうことや臓器の⼀部がなくなることなど、患者さんにとっては⼤きな「侵襲」を伴うものといえます。しかし、医療技術の進歩に伴い、近年では病気を治すことはもちろん、⾝体への負担をできるだけ軽減する「低侵襲医療」が可能になりました。切開による傷が⼩さくてすむ腹腔鏡下⼿術やロボット⼿術などは、痛みや出⾎の低減、術後の早期回復などに⼤きく貢献しています。また、がんだけに絞って放射線を照射できる技術の進歩により、⾼い治療効果を得ながら周囲の臓器へのダメージは抑え、副作⽤が軽減されるなどのメリットが得られるようになっています。

前⽴腺治療センターの特⾊

「持病があるから⼿術は難しいといわれた」「⼊院したくない」「副作⽤が⼼配」「通院が⼤変」など、患者さんによって病状やニーズはそれぞれ異なります。当センターでは、⼿術⽀援ロボット「ダビンチXi」、ロボット型放射線治療装置「サイバーナイフ」、「密封⼩線源治療」といった先端医療を導⼊していることで、⼀⼈ひとりに合わせたオーダーメードな治療法を選択することが可能です。
全国で、ダビンチは約300台、サイバーナイフは約40台が稼働。密封小線源治療を実施している施設は約110ヵ所ありますが、これら3つの先端医療をすべて揃えている施設はほとんどありません。

「ダビンチ」は2012年の導⼊以来440名以上、「密封⼩線源治療」は2007年の導⼊以来500名以上の前立腺がん患者さんに使用実績があり、良好な治療成績を得ております。また、2016年から前立腺がんに対する定位放射線治療が保険適用となり、サイバーナイフを用いた放射線照射治療にかかる日数が大幅に短縮されました(37〜39回→5回)。定位放射線治療、密封小線源治療を受ける患者さんには、治療後しばらくしてから発生する直腸後遺症(下血、肛門痛など)の予防策として、space OAR システムも導入しています。
患者さんに最善の医療を提供できるよう、スタッフ⼀同、⾃信と誇りを持って治療を行っておりますので、ぜひご相談ください。

3つの治療法

ダビンチ

概要
⼿術⽀援ロボットの「ダビンチXi」は、腹部に⽳を開けてカメラを⼊れ、その映像を⾒ながら病巣を取り除く「腹腔鏡下⼿術」に⽤いられます。ダビンチのロボット部には、電気メスなどを装備できる3本のアームとカメラが装着されており、医師は操作部で映し出される⾼画質で⽴体的な3D画像を⾒ながらアームを操作して、がんの切除や患部の縫合などを行います。⼈間の⼿よりも緻密なロボットの動きで、安全・確実な⼿術が可能です。
メリット
ダビンチによる前立腺全摘術は2012年に健康保険が適用されました。その後急速に普及し、現在国内の前立腺全摘術の半数以上がダビンチにより行われており、⼿術成績も良好です。「出⾎量が少ない」「術後の痛みが少ない」「回復が早く早期退院が可能」「がんの取り残しが少ない」「術後尿失禁が少ない」「勃起機能維持率が⾼い」などのメリットが報告されています。東部病院では2012年のダビンチ導入以来、400名以上の前立腺がん患者さんがダビンチによる手術を受けております。また、前立腺全摘以外の手術でもダビンチを使用しており、ダビンチの使用実績が豊富です。

ロボット手術センター
医療費目安
健康保険3割負担の方で40~50万円

スケジュール

※手術中に眼圧が上がることがあるので、眼病のチェックをします。出血が多い時に備えて、念のためご自分の血液を貯めておく処置です。

サイバーナイフ

概要
2016年4月から健康保険が適用された定位放射線治療(SBRT)を行っています。「サイバーナイフ」は、ロボットアームにX線照射装置を組み合わせた⾼精度の放射線治療装置です。最⼤で1200⽅向から照射できるロボットアームは、複雑な前⽴腺の形にもミリ単位以上の精度で対応が可能です。前立腺の位置は腸のガスや膀胱に溜まった尿などにより動くことが知られています。治療に先立って前立腺の中に照射の目印となる金マーカーを留置(2泊3日の入院)することで、正確な前立腺の位置を把握しながら照射することが可能です。
メリット
従来の強度変調照射部分(IMRT)は37〜39回の照射が必要で通院治療が7〜8週間続くことが大きな負担でした。ピンポイント照射が可能なサイバーナイフによるSBRTは、前立腺に十分な量の放射線を集中させ、周囲への影響を最小限にすることができます。前立腺がんの場合、1〜2日おきに5回の外来通院での照射、2週間で治療は終わります。照射中は痛みもなく、身体への負担が少ないのも特徴です。
「spaceOARシステム」
放射線による直腸後遺症(下血、肛門痛)を予防する目的で、前立腺と直腸の間にハイドロゲルを注入する方法で、東部病院では2018年3月から実施しています。ハイドロゲルは体内に注入すると固まり、数ヶ月後に吸収されます。ハイドロゲルにより前立腺と直腸の間にスペースができるため、直腸にかかる放射線が大幅に低減されます。注入は、金マーカー留置のときに同時に行うので、特別な負担はありません。
医療費目安
健康保険3割負担の方で40~55万円

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密封小線源治療

概要
微弱な放射線を出す⼩さな線源を⾝体の中(前⽴腺の内部)に挿⼊し、体内から放射線を照射する治療法です。線源を埋め込むときはコンピューターにより、治療効果が⾼くほかの臓器への影響が少ない位置を選びます。前⽴腺の中に集中して放射線を照射できることで⼤きな治療効果が期待できます。
メリット
挿⼊された線源から出る放射線を前⽴腺内に集中的に照射するため、尿失禁や勃起障害などの合併症が少なく、⼿術も3泊4⽇という短期間の⼊院でできます。副作⽤として排尿障害が起こりますが、多くは半年から1年ほどで改善します。病状により、小線源治療に通院での体外照射や内分泌治療を併用することがあります。詳しくは担当医にご相談ください。
「spaceOARシステム」
放射線による直腸後遺症(下血、肛門痛)を予防する目的で、前立腺と直腸の間にハイドロゲルを注入する方法で、東部病院では2018年3月から実施しています。ハイドロゲルは体内に注入すると固まり、数ヶ月後に吸収されます。ハイドロゲルにより前立腺と直腸の間にスペースができるため、直腸にかかる放射線が大幅に低減されます。注入は、小線源を留置のときに同時に行うので、特別な負担はありません。
医療費目安
健康保険3割負担の方で30~35万円

スケジュール

※より効果的な治療(根治性向上)のため小線源治療と体外照射を併用することがあります。

治療実績

臓器 疾患 治療 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度
前立腺 前立腺がん ロボット支援下根治的前立腺全摘術 71 70 78 103 125 111 106
根治的前立腺全摘術(腹腔鏡下・開放手術) 0 0 0 0 0 0 0
精巣摘除術(内分泌治療として) 5 9 13 11 4 10 1
密封小線源治療 72 63 46 34 49 35 35
うち外照射併用治療 38 32 21 18 33 25 23
うち救済小線源治療 0 0 0 0 0 0 2
体幹部定位放射線治療(SBRT) 0 0 16 31 40 37 28
前立腺針生検 331 325 327 363 432 350 331
前立腺肥大症 HoLEP(レーザー前立腺核出術) 65 50 54 45 45 29 24
TUEB(経尿道的前立腺核出術) 0 0 0 10 11 10 14
TURP(経尿道的前立腺切除術) 1 2 2 0 1 6 2

 

よくある質問