胆道がん
当院での胆道がん治療
私たちは「あきらめない治療」「低侵襲な治療」「個別治療」をモットーに胆道がん治療に取り組んでいます。消化器外科、消化器内科、放射線科、化学療法センターでチームとなり、迅速に的確な治療方針を決めております。胆道癌の唯一の根治的治療は手術であり、低侵襲手術(腹腔鏡・ロボット)で根治性が得られる患者さんに対しては低侵襲手術を積極的に行っています。手術による根治が困難である場合には薬物療法を行います。がんの薬物療法は常に進化しており、診断時には手術による切除が不可能と判断された癌であっても、薬物療法が奏功し根治切除に至るconversion (コンバージョン)手術が可能となった患者さんが増えてきています。消化器外科・消化器内科・腫瘍内科の垣根が低く、低侵襲手術から他臓器合併切除を伴う高難度手術まで行う事ができる当院だからこそ、あきらめない治療を提供することができると考えています。また、あきらめない治療を行う体制を整備した上で、患者さん一人一人に合った医療を提供しています。
胆道がんとは?
胆道とは、胆管及び胆嚢のことを指します。胆管は肝臓の中にある肝内胆管、肝臓の外から十二指腸乳頭部までの肝外胆管に分けられます。肝外胆管の途中で枝分かれし、胆汁を濃縮する臓器である胆嚢と呼ばれる袋が繋がっています。
胆道がんは、病気のできる位置によって病名・治療・術式が異なります。
・遠位胆管がん
・肝門部領域胆管がん
・肝内胆管がん
・十二指腸乳頭部がん
・胆嚢がん
切除可能な胆道がんに対する標準術式は、遠位胆管がん・十二指腸乳頭部がんに対しては膵頭十二指腸切除、肝内胆管がんに対しては肝切除、肝門部胆管がんに対しては、肝切除+肝外胆管切除±膵頭十二指腸切除、胆嚢がんに対しては、拡大胆嚢摘出術+リンパ節郭清(深達度に合わせて胆嚢が付着している肝臓を削り取る)を行うことが一般的です。ただ、胆道がんは一人一人の患者さんの解剖や腫瘍の位置などを詳細に把握し、術式を慎重に判断する必要があり、この限りではありません。また、それぞれの術式ごとに低侵襲手術(腹腔鏡・ロボット)の適応が異なります。当院では、現状本邦で行うことのできる低侵襲術式の施設基準を全て満たしています。患者さんの根治性と安全性を第一に考え、開腹手術が適するのか、それとも低侵襲手術の方が適するのかを判断して提供いたします。
胆道がんの分類と進行度
胆道がんがどの程度進行しているかを表すのが、病期(ステージ)といわれるもので、StageⅠ~Ⅳで分類されています。胆道がんのステージは、がんの種類、局所進行の程度、転移の程度により決定されます。遠位胆管癌・十二指腸乳頭部癌・胆嚢癌について説明します。
□胆道がんの病期(ステージ)
以下、がん情報サービスホームページより引用
https://ganjoho.jp/public/cancer/biliary_tract/treatment.html
・遠位胆管がん

・肝門部領域胆管がん

・肝内胆管がん

・十二指腸乳頭部がん

・胆嚢がん

□転移の程度
胆道がんでよくみられる転移は、リンパ節転移、肝転移、腹膜転移です。リンパ節への転移の程度は、転移の個数により分類され、遠隔転移の有無によりM0またはM1に分類されます。
診断方法
一般的な診断から治療までの流れは、以下のようになっています。
0308_Part6-1.jpg)
□血液検査
一般的な血液検査、肝胆道系酵素、黄疸の数値などに加えて、腫瘍マーカー(CA19-9、
CEA)などの項目を調べます。
□超音波検査
腫瘍の有無を確認したり、胆管の拡張の有無を調べます。体に負担が少なく、診断の最初に行うことの多い検査です。
□CT検査
X線を使って、体の断層写真を撮影します。胆道がんの周囲への浸潤の評価、転移の有無の判定が行われます。胆道がんの正確な診断のために、主に造影剤を使用した検査を行います。
□MRI検査
CT検査と同様に断層撮影を行う検査です。X線ではなく強力な磁気を利用した検査法です。胆管や膵管の描出に特化したMRCP検査や、腫瘍・肝転移などの評価のための造影MRI検査があります。
□胆膵内視鏡検査
胆道がんの診断確定のためのより詳細な検査に、胆膵内視鏡検査があります。次に挙げる① ERCP、② EUSがこれに相当します。
①ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)
内視鏡を用いて十二指腸乳頭部(膵管が十二指腸に開口している部分)から膵管や胆管にカテーテルを挿入し、造影剤を注入してX線撮影する検査です。カテーテルから膵液や胆汁、細胞などを採取しがん細胞の有無を調べます。黄疸を認める場合には胆管にステントを挿入することもあります。
②EUS(超音波内視鏡)
先端に超音波装置のついた内視鏡を用いて、胃・十二指腸の中から膵臓を観察する検査です。微小な病変の観察に関してCTなどの他の画像検査より優れています。超音波画像を見ながら針で組織採取(EUS-FNA)することもあります。


慶應義塾大学病院KOMPASから許可を得て転載 http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000785.html
下に示すのは当院における胆膵内視鏡検査(ERCP、EUS)の実施数であり、年間600例以上の豊富な検査実績があります。EUS(組織検査無し)は外来で実施可能ですが、ERCPおよび組織検査を伴うEUS(EUS-FNA)は入院が必要な検査となります。

治療方法
胆道がんの治療には外科的治療(手術)、薬物療法(抗がん剤治療)、放射線治療法、支持療法などがあります。胆道がんの診断がつき、予想される病期を判定した段階で、患者さんの全身状態などを考慮して、治療方針を相談、決定していきます。胆道がん診療ガイドラインでは、切除可能性に応じて下図のような治療アルゴリズムが推奨されています。

http://www.jsco-cpg.jp/biliary-tract-cancer/
胆道がん診療ガイドラインより引用
当院では、消化器外科・消化器内科・放射線診断科が合同で行うカンファレンスによって、治療前診断や治療方針を十分に検討します。治療ガイドラインをベースとしたうえで、患者さん個々の状態、価値観や希望に寄り添って治療方針を相談していきます。実際の治療に伴う益と害、治療のリスクについては担当医より十分にご説明をした上で、治療進んで頂きます。
胆道がんは、高率に閉塞性黄疸や胆管炎を来します。前述の治療アルゴリズムに記載の通り、胆道ドレナージ(胆管のつまりを解除すること)を適切に行いながら、癌の治療を計画する必要があります。この胆道ドレナージは、内視鏡的に行うことが多く、消化器内科が中心となって処置を行います。
□胆道がんに対する手術
胆道がんに対する外科的治療(手術)は、がんの発生部位や進行度によって切除の範囲が多少異なります。癌が肝外胆管や乳頭部にできた場合、膵頭部を切除する「膵頭十二指腸切除術」を行います。肝内胆管にできた場合、「肝切除」を行います。肝門部胆管にできた場合、「肝切除+肝外胆管切除」や「肝膵同時切除」が必要となります。
アプローチ法として後述する「低侵襲手術(腹腔鏡・ロボット)」を選択することがあります。
□当院の特徴:高度技能専門医認定施設
胆道がんの手術をはじめとする肝胆膵高難度手術において、手術に関連した死亡率や合併症率は手術症例数の多い施設(ハイボリュームセンター)ほど少ないことが知られています。当院は日本肝胆膵外科学会の認定する「高度技能専門医認定修練施設A」に認定されており、県下有数のハイボリュームセンターとして認定されています。神奈川県内では、当院を含め県立がんセンターや大学病院など9施設のみが認定されています。
日本肝胆膵外科学会ホームページより(2025年11月確認)
0308_Part10_1-1.jpg)
□低侵襲膵/肝切除術(腹腔鏡・ロボット)
低侵襲手術は鏡視下手術とも言われ、腹部にあけた穴からカメラや器具を挿入して、モニターを見ながら行う手術です。開腹手術と比較すると、傷が小さく体への負担が少ないことが知られています。当院では腹腔鏡下/ロボット支援下膵切除・肝切除の学会基準を全て満たしており、低侵襲手術を患者さんに積極的に提供しています。もちろん全ての方に適応があるわけではなく、がんの部位や術式などからより安全で確実な方法を選択することが重要です。
□手術成績
下に示すのは当院における膵切除・肝切除数と低侵襲手術の割合です。当院における膵切除・肝切除では、低侵襲手術の割合が年々増加してきています。一方、合併症が少なく術後在院日数が短いのが当院の特徴です。術後在院日数については平成30年のデータで全国2位(神奈川県内1位)の成績でした。


▲クリックで肝胆膵外科ページへ
□胆道がんに対する化学療法・化学放射線療法
いわゆる抗がん剤の治療です。薬(注射または経口)によりがんの増殖を抑えたり、がん細胞を死滅させる治療法です。抗がん剤が、血液にはいって全身をめぐるため、拡がったがんに対しても効果が期待できます。多くの化学療法は外来(化学療法室)で行います。
<当院の化学療法室>

①切除不能胆道がんに対する薬物療法 胆道がんに対する年々進化してきています。根治が難しい胆道がんに対してがんの進行を抑える目的で行います。GEM+CDDP+Pembrolizumab、GEM+Durvalumab、S-1療法などがあります。免疫チェックポイント阻害薬の使用が可能となり、切除不能と判断された症例でも、薬物療法が効いて切除可能となり根治切除に至ったケースが増えてきています。 ②術後補助療法 術後再発リスクを下げる目的で行われます。S-1療法などがあります。 個々の患者さんのがんの性質、体力や希望などに合わせた化学療法をご提案します。また当院では、薬剤師外来を設けており、化学療法を受けている患者さんを対象に、薬剤師より抗がん剤の必要性についての説明、治療計画や副作用に対する説明などを行い、患者さんが安心して正しい方法で治療を続けていただけるようサポートいたします。
診療実績
難易度が高い胆道がん手術の治療は、日本肝胆膵外科学会が認定する高度技能専門医制度指定施設での専門医による治療が推奨されています。(リンク:日本肝胆膵外科学会)当院は専門施設に認定されており、専門医が治療にあたります。(表3)さらに当院で日本内視鏡外科学会の内視鏡技術認定医が低侵襲手術を施行します。(リンク:日本内視鏡外科学会)。
(表3)日本肝胆膵外科学会修練施設

日本肝胆膵外科学会ホームページ(2025年11月)
担当科目

