あきらめない肝胆膵外科治療
ハイボリュームセンターでの肝胆膵外科専門医による治療。
腹腔鏡下手術による低侵襲かつ正確な治療、チームによる細やかなケアと集学的治療をしています。
肝臓がん・胆道がん・膵臓がんは、非常に予後の悪い病気で、手術の難易度も高いとされております。
当科では、肝胆膵高度技能専門医を中心に「あきらめない肝胆膵外科」をモットーに、これらの疾患に対して手術治療を中心に化学療法や放射線療法を用いて、高度な集学的治療を提供いたします。さらに肝臓がんや膵臓の良悪性疾患に対しては内視鏡外科技術認定医を中心に腹腔鏡下手術を積極的に施行しております。
当院は日本肝胆膵外科学会の認定する肝胆膵高度技能修練施設Aに認定されているハイボリュームセンターです。肝胆膵分野は手術だけでなく、診断や術前術後の管理が非常に重要とされています。
当院では全ての症例を消化器外科、消化器内科でカンファレンス(毎週開催クラスターカンファレンス)し診断、治療法方針を決定します。さらに患者支援センター(TOPS)が患者さんが安心して快適に治療を受けていただけるように、外来から退院までサポートしていきます。
また、切除不能症例に対しても患者さんの状態に合わせて東部がんセンターにて化学療法や緩和療法などを施行しております。
診療実績
膵切除、肝切除が多く行われております。特に術後在院日数が比較的短く、腹腔鏡下手術を多く取り入れているのが当科の特徴です。合併症が少ないことが術後在院日数の短縮につながります。
2023年 肝切除 44例(腹腔鏡25例 57% ロボット15例 34%)
術式 | 症例数 | 腹腔鏡 | ロボット |
---|---|---|---|
葉切除 | 5 | 4 | 0 |
区域切除 | 4 | 3 | 0 |
亜区域切除 | 5 | 2 | 2 |
外側区域切除 | 3 | 2 | 1 |
部分切除(高難度) | 7 | 5 | 2 |
部分切除 | 20 | 9 | 10 |
胆道再建を伴う | |||
葉切除 | 1 | 0 | 0 |
膵切除を伴う肝切除 | 1 | 0 | 0 |
2023年 膵切除 42例(腹腔鏡1例 2% ロボット13例 30%)
術式 | 症例数 | 腹腔鏡 | ロボット |
---|---|---|---|
膵頭十二指腸切除数 | 31 | 0 | 7 |
膵体尾部切除(D2郭清) | 8 | 1 | 5 |
膵尾部切除(郭清なし) | 2 | 0 | 1 |
膵全摘 | 1 | 0 | 0 |
2023年 術後在院日数
術式 | 術後在院日数(中央値) |
---|---|
肝切除(胆道再建除く) | 6 |
膵頭十二指腸切除 | 14 |
膵体尾部切除 | 10.5 |
診療体制
2名の肝胆膵外科専門スタッフが診療責任者として全症例の手術・入院診療・外来診療にあたります。
入院診療はレジデントとともに4~5名のチームで担当します。
施設基準
- 日本胆膵外科学会高度技能医修練施設A
- 日本外科学会外科専門医制度修練施設
- 日本消化器外科学会専門医修練施設
- 日本肝臓学会認定施設
- 日本胆道学会認定指導施設
- 日本膵臓学会認定指導施設
肝臓・膵臓 ~部位別の特徴~
肝臓
1 腹腔鏡下肝切除術
腹腔鏡手術は、いくつかの穴(5~12㎜)をあけてお腹の中をふくらませ、その穴に器具を出し入れする筒を設置して、その筒を通してお腹の中を小さいカメラ(腹腔鏡)で観察しながら専用の手術器具を挿入して行う手術法で、開腹手術に比べて体にやさしい低侵襲な手術として知られております。当科での腹腔鏡下肝切除の術後在院日数は6日となっており、開腹手術に比べて短い傾向にあります。
また、最近ではCT画像データをもとにした3D画像を作成し、手術前にシミュレーショ画像を作成し、手術の際に利用しております。すべての患者さんに腹腔鏡下肝切除が適応されるわけではなく、手術においては患者さんの根治性と安全性を第一に考え、開腹手術が適しているのか、それとも腹腔鏡手術の方が良いのかを判断しております。
2 ロボット支援下肝切除術
済生会横浜市東部病院肝胆膵外科では肝胆膵領域の高難度手術を多数施行しております。(日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医指導施設A認定)。
2022年4月よりロボット支援下肝切除術が保険適用となったことを受け、2022年9月より当院にて「ロボット支援下肝切除術」を開始しました。
また、肝胆膵外科を担当する西山は多くのロボット支援下手術を経験し、神奈川県で唯一の学会が定めるプロクター(手術指導医)<ロボット支援下膵体尾部切除、ロボット支援下肝切除(暫定)>となっております。<日本内視鏡外科学会 プロクター制度>
ロボット支援下手術「ダヴィンチ」は、「自由度の高い精密で安定した多関節機能、高精細な3次元拡大映像」を兼ね備えています。ロボットが自分の意志で手術をするわけではありません。精密な内視鏡下手術を行うことを支援するための最新鋭コンピュータであり、外科医の意志で4本のアームを操り手術を行います。執刀は日本肝胆膵外科学会高度技能専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医かつIntuitive Surgical社による認定を受けた医師が行います。
三次元画像や多関節鉗子、手ぶれ防止機能を搭載しており、術野のより直感的な手術操作を可能にし、きわめて正確な手術操作を可能とします。
特に肝切除では肝門部といわれる肝臓の入り口の部分の脈管の処理に多関節機能を持つロボット支援下手術が有利であるといわれています。当院ではロボット支援下肝外側区域切除および肝部分切除を開始しており、今後は順次適応を拡大していく予定です。
ロボット肝切除画像
3 ICG蛍光法併用腹腔鏡下肝切除術
Indocyanine green(ICG)と言われる薬剤を注射することにより、ICGの蛍光特性を利用し、肝臓を手術中に染色することができ、切離範囲を同定することができます。近年このICGを利用した腹腔鏡下肝切除術が普及しつつあり、当科でもいち早く導入し、手術時に利用しております。
4 肝細胞がん、転移性肝がんに対するサイバーナイフ
サイバーナイフは、ロボット型放射線治療装置で、従来の方法では照射できない患者さんにも優れた効果が期待できます。当院でも平成23年4月にサイバーナイフが導入されました。様々な領域のがんに利用できるのですが、当科では消化器内科、放射線治療科と協力し、手術とサイバーナイフを組み合わせたりすることで、肝細胞がんなどの肝腫瘍に対して様々な治療を施行しております。
・肝細胞がんへのピンポイント照射が可能
・治療期間は1週間前後
・消化器内科と連携
4 経皮経肝門脈塞栓術(PTPE)
術前門脈塞栓術は、大きく肝切除術を行う際に、手術数週間前に残る予定の肝臓を肥大させることにより、手術の後の肝不全を予防する処置になります。
切除予定の肝臓を栄養する血管(門脈)を塞栓し、残る肝臓へより多くの血液が流れるようにして、肝臓を大きくさせます。この処置を行うことにより、手術後の肝不全を予防でき、患者さんが安全に手術を受けれるように努めております。
膵臓
1 腹腔鏡下膵切除術肝臓と同様に膵切除においても腹腔鏡手術を行っています。開腹手術に比べて傷も小さく、体にやさしい低侵襲な手術です。肝臓と同様に、もちろんすべての疾患に適応があるわけではありませんが、安全面においても腹腔鏡手術が可能であれば積極的に施行しております。
済生会横浜市東部病院外科では肝胆膵領域の高難度手術、消化器癌に対する腹腔鏡下手術を多数施行しております。(日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医指導施設A認定)。当科では平成31年8月に腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術の施設認定を取得しました。この腹腔鏡下膵頭十二指腸切除は限られた施設のみ施行可能な手術で神奈川県下では3施設目となります。膵頭十二指腸切除術は多くの臓器を切除し再建が伴うため、患者さんに与える影響が大きな手術ですが、腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術によって患者さんの身体の負担を軽減する可能性があります。
腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術の施設基準は①膵臓手術を年間50例以上施行していること、②膵頭十二指腸切除術を年間20例以上施行していること、③腹腔鏡下膵切除を20例以上実施した経験を有する医師が常勤すること、と厳しい基準になっています。当施設では施設基準を満たしており、保険診療にて腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術が可能です。現在、この手術の適応は「原則として脈管の合併切除及びリンパ節郭清を伴わないもの(がん以外の疾患に対する手術)」となっております。
済生会横浜市東部病院肝胆膵外科では肝胆膵領域の高難度手術に加えて膵切除においても腹腔鏡補助下膵頭十二指腸など低侵襲手術を多数施行しております。(日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医指導施設A認定)。2020年4月に肝胆膵疾患に対してロボット支援下膵切除術(ロボット支援下膵頭十二指腸切除術および膵体尾部切除術)が保険適用となったことを受け、2021年8月より神奈川県で初めて「ロボット支援下膵切除術」を開始し、安全に症例を重ね、2021年12月より厚生労働省の施設基準を満たし保険適用内(ロボット支援下膵頭十二指腸切除、ロボット支援下膵体尾部切除)の治療となりました。
ロボット支援下手術「ダビンチ」は、「自由度の高い精密で安定した多関節機能、高精細な3次元拡大映像」を兼ね備えています。ロボットが自分の意志で手術をするわけではありません。精密な内視鏡下手術を行うことを支援するための最新鋭コンピュータであり、外科医の意志で4本のアームを操り手術を行います。執刀は日本肝胆膵外科学会高度技能専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医かつIntuitive Surgical社による認定を受けた医師が行います。
三次元画像や多関節鉗子、手ぶれ防止機能を搭載しており、術野のより直感的な手術操作を可能にし、きわめて正確な手術操作を可能とします。特に膵切除では体腔の深い場所での操作や視野確保が困難な部位において腹腔鏡手術を上回る有用な手術とされています。また腹腔鏡下での膵空腸吻合や胆管空腸は非常に高度な技術を要しますがロボットを利用することでより正確な縫合を行うことができます。
当院では、がん診療拠点病院として、膵がん早期診断プロジェクトを立ち上げました。膵がんにおいては、症状が出現したときにすでに病気が進んでいて、手術ができない患者さんが多いことが特徴です。そのため手術が可能な段階での早期発見、早期治療を目指すことが重要とされています。
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外科部長
専門分野
一般・消化器外科
特に専門としている分野
肝・胆・膵疾患
学会専門医・認定医
- 日本外科学会外科専門医・指導医
- 日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医
- 日本肝胆膵外科学会高度技能専門医
- 日本内視鏡外科学会技術認定医
- 日本消化器病学会消化器病専門医・指導医
- 日本肝臓学会専門医・指導医
- 日本胆道学会認定指導医
- 日本膵臓学会認定指導医
- 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
- 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
- 日本肝胆膵外科学会評議員
- 日本臨床外科学会評議員
- ロボット支援下膵頭十二指腸切除プロクター
- ロボット支援下膵体尾部切除プロクター
- ロボット支援下肝亜区域以上(外側区域以外)
切除プロクター - ロボット支援下総胆管拡張症手術(暫定)
プロクター - 日本ロボット外科学会専門医(国内B級)
- 医学博士
- 神奈川県立保健福祉大学 非常勤講師
- 厚生労働省開催指針準拠 緩和ケア研修会修了
医長
専門分野
一般・消化器外科
特に専門としている分野
肝・胆・膵疾患
学会専門医・認定医
- 日本外科学会専門医
- 日本消化器外科学会消化器外科専門医
- 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
- 厚生労働省開催指針準拠 緩和ケア研修会修了