対象がん一覧

子宮頸がん

子宮頸がんとは?(原因・発生・進行)

子宮頸がんは、子宮の入り口に発生するがんです。子宮頸部の表面をおおっている上皮には扁平上皮細胞と円柱上皮細胞(腺細胞)の2種類があり、子宮頸がんは主にこの2種類の細胞の境界付近から発生します。この境界部位は卵胞ホルモン(エストロゲン)の影響をうけて、成熟期には子宮頸部の入り口近くにありますが、老齢期になると子宮頸部の奥の頸管内に移動します。そのため、老齢期ではがんを肉眼で発見することが難しくなることがあります。
 子宮頸がんには大きく分けると、扁平上皮細胞に発生する『扁平上皮癌』と、円柱上皮細胞に発生する『腺がん』があります。腺がんは最近増加し約20%を占めており、扁平上皮癌にくらべ発見しにくく、初期からリンパ節転移が起こりやすく、放射線治療や化学療法が効きにくいため治療の難しいがんです。

 

 

 

 

進行と生存率
 子宮頸がんの発生原因として、ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染が明らかになりました。子宮頸がん予防ワクチンは本邦でも9価HPVワクチンまで承認されており、HPVワクチン接種を国のプログラムとして早期に取り入れたオーストラリアでは、HPVワクチン接種と子宮頸がん検診によって2028年に世界に先駆けて新規の子宮頸がん患者がほぼいなくなるとのシミュレーションがなされました。HPVワクチンが定期接種化されているにもかかわらず積極的勧奨が中断されている日本においては、性交開始年齢の若年化に伴い子宮頸がんが若い女性に急増しています。また、喫煙も子宮頸がんの発生を高める要因と考えられています。

「国立がん研究センター がん情報サービス」より転載 https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/treatment.html
日本婦人科腫瘍学会編「患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第2版(2016年)」(金原出版)より作成

扁平上皮がんは上図のような流れで発生・進行していきます。HPVに感染しても、その多くは免疫系によって排除されてしまいますが、一部が持続感染し5年から10年かけてがんになるといわれています。
HPV感染者で浸潤がんまで進行するのは1000人に1人くらいと考えられています。

子宮頸がんの進行期分類

 

「国立がん研究センター がん情報サービス」より抜粋 https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/treatment.html
日本産科婦人科学会・日本病理学会編「子宮頸癌取扱い規約 病理編 第4版(2017年)」p.10(金原出版)より作成

「国立がん研究センター がん情報サービス」より抜粋 https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/treatment.html
日本婦人科腫瘍学会編「患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第2版(2016年)」(金原出版)より作成

2020年日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告 5年生存率

診断方法

子宮頸がん検診はスクリーニング検査といわれており、症状のあるなしにかかわらず成人女性は誰でも受けるべき検査です。検査結果は下図のようになります。陰性でなければただちに婦人科のある医療機関を受診して精密検査を受ける必要があります。
 異常の種類によって、HPVウイルス検査を行ったり、コルポスコピー(腟拡大鏡診)と組織生検を行う場合があります。

ベセスダシステムに基づく子宮頸がん細胞診の分類(扁平上皮細胞)

日本産婦人科医会 改定「ベセスダシステム2014に準拠した子宮頸部細胞診報告様式」より

がんであることがわかったら、そのがんの広がりを視診、触診、膀胱鏡や直腸鏡などの内視鏡検査、CTおよびMRIなどの画像検査を行います。子宮頸がんの進行期は手術前に診断されます。

治療方法

 上皮内癌は子宮頸部を円錐状に切り取る子宮頸部円錐切除術でほとんど治りますが、上皮内扁平上皮癌にくらべ再発の危険性が高い上皮内腺がんであったり妊娠の希望がないなどの場合は単純子宮全摘術が行われることもあります。子宮頸部円錐切除は子宮を残すことができますが、その後妊娠した場合、流産や早産、帝王切開のリスクが高まるという報告があります。
 ⅠA1期は、基本的に単純子宮全摘出術が推奨されます。
 ⅠA2期は、広汎子宮全摘出術あるいは準広汎子宮全摘出術+骨盤リンパ節郭清が行われます。
 ⅠB期とⅡ期では、広汎子宮全摘出術あるいは放射線治療、同時化学放射線療法が推奨されます。手術後、再発の危険性が高い場合は術後補助療法として同時化学放射線療法あるいは放射線治療を行うことがあります。
 Ⅲ期あるいはⅣA期では、同時化学放射線療法が第一選択となります。
 ⅣB期は化学療法(抗がん剤治療)による全身治療が主体となります。



「国立がん研究センター がん情報サービス」より転載 https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/treatment.html
日本婦人科腫瘍学会編「子宮頸癌治療ガイドライン2017年版」p.24-28(金原出版)より作成


「国立がんセンターがん情報サービス」より転載 https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/treatment.html

▶当院での治療について
①手術療法
各々の術式に対して、開腹手術もしくは腹腔鏡下手術を適応に応じご提案しております。
広汎子宮全摘出術に関しましては、日本産科婦人科学会が定める“子宮頸癌に対する腹腔鏡下広汎子宮全摘出術登録施設”に当院は登録されております。
なお、現在当院では妊孕性温存を目的とした広汎子宮頸部摘出術は、現在行っておりません。

②放射線治療
放射線治療科と連携し、外部照射(体の外から放射線を照射)を行っております。子宮と腟に特殊な器具を挿入して行う腔内照射は他病院を紹介させていただいております。

③同時化学放射線療法
腔内照射は他院にて行っていただきますが、外来または入院にて治療を行っております。

④化学療法(抗がん剤治療)
術前および術後補助療法として行っております。

担当科目

産婦人科