治療方針 受診から手術までの流れ 診療実績
診療体制 スタッフ紹介 部位別の特徴

治療方針

あきらめない肝胆膵外科治療
ハイボリュームセンターでの肝胆膵外科専門医による治療
腹腔鏡下手術による低侵襲かつ正確な治療
チームによる細やかなケアと集学的治療

肝臓がん・胆道がん膵臓がんは、非常に予後の悪い病気で、手術の難易度も高いとされております。当科では、肝胆膵高度技能専門医を中心に「あきらめない肝胆膵外科」をモットーに、これらの疾患に対して手術治療を中心に化学療法や放射線療法を用いて、高度な集学的治療を提供いたします。さらに肝臓がんや膵臓の良悪性疾患に対しては内視鏡外科技術認定医を中心に腹腔鏡下手術を積極的に施行しております。

当院は日本肝胆膵外科学会の認定する肝胆膵高度技能修練施設Aに認定されているハイボリュームセンターです。肝胆膵分野は手術だけでなく、診断や術前術後の管理が非常に重要とされています。当院では全ての症例を消化器外科、消化器内科でカンファレンス(毎週開催クラスターカンファレンス)し診断、治療法方針を決定します。
さらに患者支援センター(TOPS)が患者さんが安心して快適に治療を受けていただけるように、外来から退院までサポートしていきます。
また、切除不能症例に対しても患者さんの状態に合わせて東部がんセンターにて化学療法や緩和療法などを施行しております。

受診から手術までの流れ

初診から入院まで

東部病院外科では、初診日から手術のための検査が行えるよう、食事を摂らずに来院していただければ、初診日に腹部CT検査を施行することで、腫瘍の浸潤範囲や切除適応、術式などを確認します。

肝胆膵外科では初診日から手術までの期間を約2~4週間を目標にしています。その間にがんの診断や術式決定のためにMRI検査や内視鏡検査を施行します。また、全身麻酔のために心機能、肺機能を検査し、患者支援センター(TOPS)を受診していただき、手術への準備を進めていきます。

入院

入院は通常手術の前日にしていただきます。手術当日は集中治療室にて厳重に管理させていただきます。手術直後から疼痛管理の下リハビリを開始し、早期の退院を目指します。手術の内容や術後経過によって異なりますが、肝切除であれば7〜10日間、膵切除であれば10〜14日間で退院していただけています。

退院後

手術から約2週間後に退院後初回外来へ受診いただき、がんの進行度によっては術後補助化学療法を開始いたします。約5年間は定期的な採血検査・画像検査などを施行し外来通院していただきます。

 

 

診療実績

膵切除、肝切除が多く行われております。特に術後在院日数が比較的短く、腹腔鏡下手術を多く取り入れているのが当科の特徴です。合併症が少ないことが術後在院日数の短縮につながります。

 

肝胆膵全症例 103例(高難度手術 71例)

肝切除 42例(腹腔鏡 25例 59.5%)

膵切除 56例(腹腔鏡 10例 17.9%)

その他 5例

 

2019年 肝切除 42例(腹腔鏡25例 59.5%)

術式

症例数

腹腔鏡

葉切除

区域切除

亜区域切除

外側区域切除

部分切除

20

16

胆道再建を伴う

葉切除

S4a+S5切除

 

2019年 膵切除 56例(腹腔鏡10例 17.9%)

術式

症例数

腹腔鏡

膵頭十二指腸切除術

32

膵体尾部切除(D2郭清)

17

膵尾部切除(郭清なし)

膵全摘術

 

2019年 術後在院日数 術後在院死亡・90日以内死亡なし

術式

術後在院日数<中央値>

肝切除(胆道再建除く)

膵頭十二指腸切除

11.5

膵体尾部切除

9.5

 

 

肝胆膵手術(高難度手術、合計)

 

 

肝切除数と腹腔鏡手術の割合

 

 

膵切除数と腹腔鏡手術の割合

 

診療体制

2名の肝胆膵外科専門スタッフが診療責任者として全症例の手術・入院診療・外来診療にあたります。入院診療はレジデントとともに4〜5名のチームで担当します。

スタッフ紹介


 

施設基準

日本胆膵外科学会高度技能医修練施設A
日本外科学会外科専門医制度修練施設
日本消化器外科学会専門医修練施設
日本肝臓学会認定施設
日本胆道学会認定指導施設
日本膵臓学会認定指導施設

肝臓・膵臓 〜部位別の特徴〜

肝臓

1 腹腔鏡下肝切除術

腹腔鏡手術は、いくつかの穴(5~12㎜)をあけてお腹の中をふくらませ、その穴に器具を出し入れする筒を設置して、その筒を通してお腹の中を小さいカメラ(腹腔鏡)で観察しながら専用の手術器具を挿入して行う手術法で、開腹手術に比べて体にやさしい低侵襲な手術として知られております。当科での腹腔鏡下肝切除の術後在院日数は6日となっており、開腹手術に比べて短い傾向にあります。

術前シミュレーション

また、最近ではCT画像データをもとにした3D画像を作成し、手術前にシミュレーショ画像を作成し、手術の際に利用しております。

すべての患者さんに腹腔鏡下肝切除が適応されるわけではなく、手術においては患者さんの根治性と安全性を第一に考え、開腹手術が適しているのか、それとも腹腔鏡手術の方が良いのかを判断しております。

 

2 ICG蛍光法併用腹腔鏡下肝切除術

Indocyanine green(ICG)と言われる薬剤を注射することにより、ICGの蛍光特性を利用し、肝臓を手術中に染色することができ、切離範囲を同定することができます。近年このICGを利用した腹腔鏡下肝切除術が普及しつつあり、当科でもいち早く導入し、手術時に利用しております。

 

3 肝細胞がん、転移性肝がんに対するサイバーナイフ

肝細胞がんへのピンポイント照射が可能/治療期間は1週間前後/消化器内科と連携

サイバーナイフは、ロボット型放射線治療装置で、従来の方法では照射できない患者さんにも優れた効果が期待できます。当院でも平成23年4月にサイバーナイフが導入されました。

様々な領域のがんに利用できるのですが、当科では消化器内科、放射線治療科と協力し、手術とサイバーナイフを組み合わせたりすることで、肝細胞がんなどの肝腫瘍に対して様々な治療を施行しております。

4 経皮経肝門脈塞栓術(PTPE)

 術前門脈塞栓術は、大きく肝切除術を行う際に、手術数週間前に残る予定の肝臓を肥大させることにより、手術の後の肝不全を予防する処置になります。

切除予定の肝臓を栄養する血管(門脈)を塞栓し、残る肝臓へより多くの血液が流れるようにして、肝臓を大きくさせます。この処置を行うことにより、手術後の肝不全を予防でき、患者さんが安全に手術を受けれるように努めております。

 

 

膵臓

1 腹腔鏡下膵切除術

肝臓と同様に膵切除においても腹腔鏡手術を行っています。開腹手術に比べて傷も小さく、体にやさしい低侵襲な手術です。肝臓と同様に、もちろんすべての疾患に適応があるわけではありませんが、安全面においても腹腔鏡手術が可能であれば積極的に施行しております。

 

2 腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術

済生会横浜市東部病院外科では肝胆膵領域の高難度手術、消化器癌に対する腹腔鏡下手術を多数施行しております。(日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医指導施設A認定)。当科では平成31年8月に腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術の施設認定を取得しました。この腹腔鏡下膵頭十二指腸切除は限られた施設のみ施行可能な手術で神奈川県下では3施設目となります。

膵頭十二指腸切除術は多くの臓器を切除し再建が伴うため、患者さんに与える影響が大きな手術ですが、腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術によって患者さんの身体の負担を軽減する可能性があります。

腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術の施設基準は①膵臓手術を年間50例以上施行していること、②膵頭十二指腸切除術を年間20例以上施行していること、③腹腔鏡下膵切除を20例以上実施した経験を有する医師が常勤すること、と厳しい基準になっています。当施設では施設基準を満たしており、保険診療にて腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術が可能です。現在、この手術の適応は「原則として脈管の合併切除及びリンパ節郭清を伴わないもの(がん以外の疾患に対する手術)」となっております。

 

3 膵がん早期診断プロジェクト

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当院では、がん診療拠点病院として、膵がん早期診断プロジェクトを立ち上げました。膵がんにおいては、症状が出現したときにすでに病気が進んでいて、手術ができない患者さんが多いことが特徴です。そのため手術が可能な段階での早期発見、早期治療を目指すことが重要とされています。