はじめに
当科のカリキュラムは、日本心臓血管外科専門医認定機構のさだめた専門医認定修練プログラムに準拠しており、後期研修を5年終了した時点で専門医認定試験を受験し、専門医の取得を目指すものである。当院は慶應義塾大学医学部外科学教室の関連施設であるため、5年間のうちで慶應義塾大学医学部ならびに関連施設との相互研修プログラムを組むことも可能であり、当院での修練終了後には慶應義塾大学医学部外科学教室、心臓血管外科研究室への紹介入局も可能である。
一般目標
臨床研修システム(2年間)の終了後、心臓血管外科専門医認定機構による心臓血管外科専門医認定の目的に則り、心臓血管外科専門医認定基準を取得に必要な単位数を満たし、倫理観を持ち、医療事故防止対策、感染対策、医療経済にも十分配慮できる有能で、信頼される心臓血管外科専門医を育成することを目標とする。
行動目標
- 心臓、血管系の発生、構造と機能を理解し、心臓疾患・血管疾患の病因、病理病態、疫
学に関する知識を持つ。 - 心臓疾患・血管疾患の診断に必要な問診および身体診察を行い、必要な基本的検査法、
特殊検査法の選択と実施ならびにその結果を総合して心臓疾患・血管疾患の診断と病態の評価ができる。 - 診断に基づき、個々の症例の心身両面に対応して心臓疾患・血管疾患に対する手術療法
を適切に選択し、安全に実施することができる。 - 患者とその関係者に病状と外科的治療に関する適応、方法、合併症、予後等について十
分な説明ができる。 - 心臓血管外科修練中の後進の外科医を日常的に指導し、その成果を評価することがで
きる。
具体的研修内容
上記目標を達成するために以下の5年間の修練を行う。尚、当院の心臓血管外科が担当している疾患は、主に後天性心疾患、大動脈疾患、成人先天性心疾患、末梢血管疾患であるため、小児先天性心疾患に関しては修練が不十分になる可能性があり、これらの疾患に関しては、関連大学を含む他の認定施設において研修する。また修練期間中、関連学会には積極的に参加し、発表の機会を与える。
【修練1年目(卒後3年目)】
外科専門医取得のため、当院一般消化器外科、呼吸器外科、脳神経外科にて(希望により形成外科等の特殊外科も可能)修練する。特に一般消化器外科においては外科手技の基本を担当指導医から学ぶ。
【修練2年目(卒後4年目)】
(前半6ヶ月)当院循環器科にて研修する。当院循環器科に配属され、病棟担当医および救急外来担当医となり、心臓血管系の各疾患の病態生理を理解し、急性期、慢性期における内科的治療を理解する。疾患の症状、理学的所見、心電図、X線検査、超音波検査、CT、MRI、心臓カテーテル検査、核医学検査の適応、方法、実際の手技を経験する。治療の際に使用される薬剤の薬理効果を理解し、その副作用に注意しながら実際の投与方法を学ぶ。また、内科的カテーテル治療(PCI、PTA等)を経験し、より総合的な循環器疾患の治療計画を判断する能力を養う。
(後半6ヶ月)心臓血管外科に配属される。救急外来および病棟にて心臓血管外科の担当医を上級医の指導下に務め、疾患の手術適応、全身状態を把握し最適な手術方法の決定を行う能力を養う。手術においては、開心術で、は主に第2助手として手術に参加し、手術全体の流れ、各疾患における手術方法を会得する。同時に人工心肺装置のメカニズムを理解し、実際の使用法、運転方法を習得する。ペースメーカー植え込み術、透析用の動静脈シャント作成術、動脈血栓摘除術、末梢動脈瘤手術、下肢静脈瘤手術等においては第1助手を務める。術後管理では、血行動態モニターの意味を理解し、適切な術後管理が行えるべく上級医の指導の下に研修する。また、地方会を中心に学会において主として症例発表を行う。
【修練3年目(卒後5年目)】
修練2年目の経験を生かし、救急外来および病棟において担当医として自立を目指す。すなわち救急外来患者、入院患者のうち担当患者に関しては検査、治療計画の第1次決定を行い患者およびその関係者に対する説明も行う。また担当患者の保険請求に関しても担当し、医療経済に関する配慮も習得する。手術では、開心術における第2助手として参加し、開胸・閉胸手技、冠動脈バイパス術における大伏在静脈、橈骨動脈等の採取を習得する。腹部大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症に対する血行再建術等では第1助手を務める。ペースメーカー植え込み術、透析用の動静脈シャント作成術、動脈血栓摘除術、末梢動脈瘤手術、下肢静脈瘤手術においては上級医の指導下に術者を務める。また、地方会を中心に学会において主として症例発表を行う。
【修練4年目(卒後6年目)】
当院での修練が不十分である小児先天性心疾患の修練のため関連大学およびその関連施設において、上記に関する研修を行う。
【修練5年目(卒後7年目)】
修練カリキュラムの最後の年にあたり、将来心臓血管外科医として働く上での実践を研修する。すなわち心臓血管外科入院患者全ての患者を担当医とともに受け持ち、指導医の指導下に各担当医を指導する。また手術予定、退院予定も計画し、円滑な病棟運営が行える様に実践する。内科とのカンファレンス、外科術前カンファレンスでは進行を担当する。手術では成人先天性心疾患手術(心房中隔欠損症等)、単弁置換術、単純な冠動脈バイパス術、胸部下行大動脈瘤手術、腹部大動脈瘤手術等の術者を経験する。より難度の高い手術では第1助手を務め多数の手術を経験する。ペースメーカー植え込み術、透析用の動静脈シャント作成術、動脈血栓摘除術、末梢動脈瘤手術、下肢静脈瘤手術においては修練2、3年目医師の手術指導を行う。また、総会を含む学会発表を最低2回、論文発表を最低1編行うことを目標とする。