1.研修目標
A)一般目標
内科全般の知識と診療に精通することが第一の目標となる。内科全般を習得した
上で糖尿病・内分泌・代謝の専門医に要求される知識と技能、資格を取得し、診療に当たる事ができる臨床医を育成することを目標とする。
B)3年間の目標
1) 第1年次(卒後3年目)
Ⅰ. 目標と内容
基本的に一般内科を中心に研修を行う。病棟では、上級医の指導下で主治医として患者の治療にあたり、初期研修医の指導も一部担当する。実際には、上級医の指導のもとに病棟で患者を5~10名受け持ち、頻度の高い内科疾患を偏りなく経験するようにする。外来は一般外来を週1回受け持つ。また、救急外来は週1回担当する。当直は、上級医とともに行う。院内では、回診、症例検討会、内科抄読会、CPCに参加し、プレゼンテーション技能と内科一般の知識を深める。学会活動は、主に内科学会関東地方会、内科関連研究会が中心となる。一年次の目標は、一般内科に必要な問診、診察のテクニックを習得し、臨床検査の意味を理解する。それらを実際に用い救急や一般患者の診断、治療に役立てることができるようにする。内科カンファランスや各分野の専門医の指導により、文献や教科書では得られないより実際的な臨床力を身につける。
Ⅱ. 疾患
A. 糖尿病
①糖尿病の診断基準及び病型分類に関する学会勧告に従い病型分類ができる。その重症度の診断ができる。
②糖尿病に必要な検査を理解し、検査方法を実習する。
③糖尿病の合併症を理解し、その評価に必要な検査方法を実習する。 特に、眼底検査の手技を学び網膜症の診断ができる。
④食事療法の理論を理解し、食品交換表を利用できる。
⑤運動療法の理論を理解し、その実施と評価ができる。
⑥経口血糖降下剤の理論を理解し、実施しその効果が評価できる。
⑦インスリン注射療法の理論を理解し、実施しその効果が評価できる。
⑧低血糖に関する知識とその対応を体得する。
⑨糖尿病は全身疾患と関連が深いので、基礎となる一般内科の知識も深めることも 研修目標の1つとする。
B. 内分泌
①ホルモン分泌、代謝、作用を理解する。
② 以下の診断、検査を理解、一部は施行できるようにする。
(1)各種内分泌負荷試験
(2)頭部X線単純検査
(3)シンチグラフィ
(4)超音波検査
(5)CTscan、MRI
(6)副腎静脈サンプリング
③ 各論
(1)視床下部、下垂体疾患
(2)甲状腺疾患
(3)副甲状腺疾患
(4)副腎皮質疾患
(5)副腎髄質疾患
(6)膵ラ氏島疾患
(7)性腺疾患
④ 以下の治療を計画し実施する。
(1)ホルモン分泌低下症に対する補充療法
(2)ホルモン分泌過剰症に対する治療
(3)クリ-ゼの治療
2) 第2年次(卒後4年目)
Ⅰ. 目標と内容
糖尿病・内分泌疾患を中心として診療を行うが、一般内科も一部担当し内科学の知識を深める。病棟では糖尿病・内分泌専門医の指導のもとに主治医として患者の診療にあたる。外来は一般内科外来が中心であるが、糖尿病教室や糖尿病患者教育チームに加わり患者教育につき研修する。当直は一般内科医として行い、研修医の指導に当たる。院内では一般内科カンファランスとともに糖尿病・内分泌内科症例カンファランスや抄読会、回診に参加する。学会活動は糖尿病・内分泌地方会や関連の研究会を中心に行うが、臨床研究のテーマを決め指導医とともにデータをまとめる。
Ⅱ. 疾患
A. 糖尿病
①2型糖尿病の食事・運動療法の処方を作成し、その評価を行い患者に指導できる。さらに経口血糖降下剤やインスリン療法の適応を判断し、その処方ができる。コントロ-ルの目標を設定し、それに到達するために治療方法を選択し、評価できる。
②1型糖尿病の診断、治療ができ、コントロ-ルの目標を設定し、それに到達するために治療方法を選択し、評価できる。
③インスリン自己注射、自己血糖測定やsick day ruleを含めた患者教育、指導ができる。
④糖尿病の合併症(網膜症、腎症、神経障害)の診断、治療ができる。
⑤一般内科知識をさらに充実し、内科認定・専門医取得も目指す。
B. 内分泌
①甲状腺超音波検査を自ら行い、所見をつけることができる。甲状腺の生検を行うことができる。
②放射線科医の指導のもとにシンチやCT scan、MRIの所見をつけることができる。
③内分泌疾患の症例を多く経験する。
3)第3年次(卒後5年)
Ⅰ. 目標と内容
糖尿病・内分泌疾患を中心として診療を行うが、一般内科も一部担当し内科学の知識を深める。病棟では糖尿病・内分泌専門医の指導のもとに主治医として患者の診療にあたる。外来は一般内科外来と糖尿病・内分泌外来をそれぞれ週1回担当する。糖尿病教室を担当し、患者教育に携わる。糖尿病患者教育チームに加わり患者教育につき研修すると同時にパラメディカルの指導を担当する。当直は一般内科医として行い、研修医の指導に当たる。院内では一般内科カンファランスとともに糖尿病・内分泌内科症例カンファランスや抄読会、回診に参加する。学会活動は糖尿病・内分泌地方会や関連の研究会に加え、総会で臨床研究を発表する。
Ⅱ. 疾患
A. 糖尿病
①特殊な患者すなわち、糖尿病性昏睡、重症合併症(特に、網膜症、腎症、神経障害)、不安定型糖尿病、小児糖尿病、妊娠(妊娠 糖尿病及び糖尿病妊娠)、外科手術例について習得しその治療が できる。
②糖尿病教室での集団指導や個別の指導を体験し、そのプロトコ-ルを自ら作成できる。
③糖尿病患者の会を企画し、自ら患者指導とともに会に参加することができる。
B. 内分泌
①甲状腺超音波、生検などの結果より、自ら治療計画を作成・実行できる。
②採血データや画像データから内分泌疾患の病態を把握し、治療計画を作成・実行できる。
③多彩な内分泌疾患を経験し、非典型的な内分泌症例に対しても病態把握・治療法の作成・実行ができる。
④初期研修医の指導もしつつ、診療研究計画作成・実行・発表・論文作成ができる。
2.研修方法および内容
研修は外来および病棟診療を平行して行う。
1)第1年次
①糖尿病・内分泌外来研修は、指導医の外来診療について、通院患者に対する問診、身体所見の取り方を学ぶ。急性合併症のない初診患者の問診、身体所見の取り方、検査計画を学ぶ。
② 検査については、眼科で眼底検査方法を学び、その診断が自らできる。指導医について神経伝導速度の測定とその評価を研修する。また、検査室において、血糖検査をはじめとする検査方法を見学し、糖負荷試験を自ら行う。また、指導医とともに内分泌負荷試験を自ら行う。
③ 栄養士が患者に行う指導について、食品交換表の利用方法を学び、患者に指導も行えるようにする。理学療法士が患者に行う運動療法について、その実際の方法を学ぶ。
④ 病棟研修は、指導医の指導のもとで担当医として患者を受け持つ。教育およびコントロ-ル目的で入院した患者の治療計画をたてそれを実施し、その効果の評価を行う。特に、インスリン療法が必要な症例については指導医の助言を得てその治療方針を立てる。病棟では週1回の指導医回診につき担当医として患者のプレゼンテ-ションを行う。また、週1回の糖尿病クリニカル・カンファレンスでは受け持ち患者のプレゼンテ-ションを行い診療の質的向上を目指す。
⑤ 自ら行う外来診療は、総合内科外来を週1回担当する。 また、救急外来番を週2回行い、内科全般と救急医療、プライマリーケアを習得する。
2)第2年次
① 糖尿病外来診療は、指導医の指導なしで自ら行い、独自で判断できない場合にはいつでも指導医に相談できる体制を取っておく。
② 病棟診療は、1型、2型糖尿病の入院患者、なかでも糖尿病の合併症(網膜症、腎症、神経障害)を有する患者を受け持ち、その治療計画を立て実行し、治療効果の評価を行う。内分泌疾患においても、指導医とともにその病態把握による適切な診断と治療を行う。
③ 病棟でのコメディカルとのカンファランスに参加し、受け持ち患者の治療方針を示し、コメディカルとの話合いのもと、チーム医療の重要性を学ぶ。
④病棟では、主治医として上級医の指導のもと治療方針を立案し、治療を行う。
⑤併診にて他科へ入院中の患者の血糖管理を行う。
急性期の脳血管障害、心血管疾患、周術期患者の血糖管理を行う。
ICUや救急病棟入院中の患者で、高カロリー輸液や重症な病態の高血糖の管理を行う。
糖尿病妊婦の出産時の血糖管理を行う。
⑥ 高血糖や低血糖にて救急搬送される患者のfirst callを担当し、初療にあたり、上級医に相談し、治療を行う。
⑦ 手術適応のある内分泌疾患患者を的確に診断し、手術担当当該科にコンサルトを行う。
⑧ 総合内科外来は引き続き行う。
3)第3年次
① 外来診療は、重症な合併症(網膜症、腎症、神経障害)を有する患者や不安定型糖尿病、妊娠合併の患者、重症内分泌疾患患者の診療を行う。特に、糖尿病性昏睡や内分泌クリーゼ、内分泌性意識消失患者が救急外来に搬送された場合は、自ら診察し、その重症度と病態の把握を行い、救急治療を行う。
② 病棟診療は、主に、糖尿病性昏睡、重症合併症(特に、網膜症、腎症、神経障害)、不安定型糖尿病、小児糖尿病、妊娠(妊娠糖尿病及び糖尿病妊娠)、外科手術例、手術適応のある内分泌疾患症例を中心に内分泌症例全般を担当し、その病態を理解し、実際の治療を行いその効果の評価ができる。ただし、研修医にとり初例の場合や自らの判断に苦慮する場合は指導医に相談し学べる体制をとる。
③ 糖尿病教室や病棟患者のグル-プ教育、当病院の糖尿病患者の会に参加しそれらの意義を理解し、指導を行う。それらの活動を通じ患者指導チ-ムのあり方、質の向上方法について正しい認識を持つ。
④ 地域の病診連携の会に参加し、自ら病診連携で紹介された症例の報告を行い、糖尿病や内分泌疾患の病診連携についての正しい理解を深める。
⑤ 病院が主催する市民公開講座に参加して、糖尿病の知識と予防について、市民に啓蒙することの重要さを学ぶ。
⑥糖尿病性腎症予防外来を担当することにより、腎症治療の理解を深める。
⑦ CGM外来の担当も行い、CGMの理解と解析を行い、患者指導を行う。
3. 院内の行事
A. 一般内科新入院および症例検討会
週1回
B. 糖尿病・内分泌入院患者カンファランス
週1回
C. 糖尿病・内分泌抄読会
週1回
D. 糖尿病入院教育カンファランス
週1回医師、栄養士、運動療法士、検査科技師が集まり糖尿病入院患者検討会を行う。
E. 糖尿病教室
週1回担当する
F. 生活習慣病教室
3ヶ月に1回担当する
G. 糖尿病早期腎症教室
月1回担当する
4. 糖尿病・内分泌内科概要
現在、糖尿病専門医4名・指導医1名と内分泌専門医2名・指導医1名が主体となり運営している。糖尿病は広く全般にわたり診療しているが、研究業績としては、腎症、大血管障害を中心に行っている。また、内分泌も診療は全般にわたり行っているが、研究業績としては甲状腺や副腎疾患が中心である。
学会活動は、糖尿病や内分泌地方会には毎回演題を提出し、総会は年に1~2回演題を提出している。また、海外の学会にも年に1~2回演題を提出し参加している。
その他多くの研究会などでの発表を行っている。