2020年度 救急科専門研修プログラム
救急医を目指すあなたへ! こしのりょう先生オリジナル東部病院ER漫画
救急科の紹介
東部病院の救急科の歴史は、済生会神奈川県病院交通救急センターの設立までさかのぼることができます。1965年に設立された交通救急センターは、日本医科大学や大阪大学と共に日本の救急医学のルーツと言われ、日本の救急医療、とくに重症外傷診療の歴史とともに歩んできました。2007年の東部病院開院後は東部病院救命救急センターが、その機能と歴史と伝統を引き継いでいます。現在の東部病院救急科も以下の3つの部門に代表されるような、日本でも屈指のレベルを誇る、先進的救急部門として活動しています。
- 救急・外傷外科(Acute Care Surgery)部門では重症外傷患者の診療に加えて、急性腹症などの内因性緊急手術も担っていて、外科と連携をしながら、救急科で日常的(年間約500件)に緊急手術をしています。このような外傷と救急を組み合わせた外科部門は、今世紀になって米国でAcute Care Surgeryという新しい概念として生まれたもので、最近では日本でも注目されるようになりました。東部病院はいち早くこの概念の下に部門を立ち上げ、2010年に第2回日本Acute Care Surgery研究会や2017年に第31回日本外傷学会総会・学術集会を主催、2018年には、日本外傷学会よる銃創・爆傷患者診療指針の作成に協力するなど、日本を牽引する部門として存在感を発揮しています。(ぜひご覧ください→『腹部外傷の臨床』元済生会神奈川県病院院長著 ※現在絶版)
- 救急放射線IVR(Emergency Radiology, Interventional Radiology)部門は、救急科専門医、放射線科専門医、IVR専門医の資格を持つ指導医のもと、読影と緊急IVRを担っています。救急と外科部門と同様、救急と放射線・画像部門の密接な協力関係も東部病院の特徴で、救急科の医師も術者として多くの緊急IVRに携わっています。DIRECT研究会(Diagnostic and Interventional Radiology in Emergency, Critical care, and Trauma:救急医療における画像診断とIVRを考える会)の事務局として数多くのセミナーを主催したり、IABO/REBOAに関する学会提言を取りまとめるなど、東部病院はこの部門でも日本のトップレベルとして注目されています。前済生会神奈川県病院院長参加の『FASTの国際コンセンサスカンファレンス』もぜひご覧ください。
- 救急集中治療(Emergency & Critical Care)部門では、救命救急センター病棟に入院したあらゆる重症患者の診療にあたります。救命救急センターに入院する年間千数百人の患者の9割以上で救急科が主科となり、PCPS, ECMO, 血液浄化などの高度な集中治療も自科で担当しています。東部病院救命救急センターは2016年から日本集中治療医学会専門医研修認定施設としても指定され、救急科専門医取得後の集中治療専門医取得も視野に入れながら研修を積むことが可能になりました。
♦︎厚生労働省が発表した『2019年 救命救急センターの評価結果について』において、東部病院同センターは、全国292施設の救命救急センター中10位、大学病院以外では全国3位にランクインしました。
特徴
他の病院にない、特筆すべき東部病院の特徴としては、2015年に横浜市重症外傷センターに指定されたこと、2017年にHybrid ERが稼働したことです。横浜市重症外傷センターは米国の外傷センターのシステムを参考に作られた制度で、横浜市内の9カ所の救命救急センターのうち、重症外傷患者に対する緊急手術、IVR、集中治療を行うスタッフや体制が充実している2カ所のみ(横浜市立大学附属市民総合医療センターと東部病院)を重症外傷センターとして指定し、地域の重症外傷患者が集約されるようになりました。このように自治体が主導して地域全体で取り組んでいる重症外傷センターのシステムは、本邦では横浜市が初めてです(その後、2018年4月に岐阜大学医学部附属病院が岐阜県から岐阜県救急外傷センターの指定を受けています)。その重症外傷センターに東部病院が指定されているということは、東部病院が通常の救命救急センターの機能にとどまらず、さらにその上を目差していると言うことを如実に示しています。
そして、2017年10月にはHybrid ERが稼働しました。Hybrid ERとは、初療室・手術室・CT室・血管造影室の4つの機能が集約されて救急患者専用に救急初療室(ER)に配備されているもので、当院は全国で10番目の導入施設になります(2018年6月現在、本邦では11施設が稼働)。また、当院のHybrid ERは2ルームタイプという非常にユニークな構造になっていて、CT装置が2つの部屋を移動して、どちらの部屋でも撮影可能です。2ルームタイプのHybrid ERは、まだ全国でも2施設にしか導入されていない、まさに最先端の治療施設です。例えば重症肝損傷の患者では、患者を移動することなく緊急開腹術と同時にIABO(大動脈内バルーン閉鎖)やTAE(経動脈的塞栓術)を行うことが可能です。また重症骨盤骨折患者に対しては、ガーゼパッキング、TAE、創外固定などの治療を連続して行うことが可能となります。まさに今までとは一線を画する治療戦略を用いることができるので、Hybrid ERとは、外傷診療におけるパラダイムシフトと言って過言ではないでしょう。また当院救命救急センターでは三次救急はもちろん、二次救急も含む幅広い救急患者を受け入れていますので、重症外傷だけではなく、心肺停止患者に対する体外循環(ECPR)やショック、脳卒中等へHybrid ER応用も開始しています。2018年6月には全国の導入施設10施設が中心となってHybrid ER System(HERS)研究会が設立されました。当院も創設メンバーとして、Hybrid ERの有用性を多方面で発信したいと考えています。
災害医療にも積極的に活動しています。日本DMAT隊員に院内で18人が登録されていて、この数は神奈川県内でも最も多い病院の1つです。2015年の東北・北関東豪雨、2016年の熊本地震でもDMAT隊員をのべ14人派遣しています。
済生会横浜市東部病院 救急科専門研修プログラム
【連携施設】
当院が基幹施設として:済生会神奈川県病院、慶應義塾大学病院、東邦大学医療センター大森病院、横浜市立大学附属市民総合医療センター、横浜市立大学附属病院、横浜労災病院、平塚市民病院、山梨県立中央病院
当院が連携施設の場合の基幹施設:慶應義塾大学病院、東邦大学医療センター大森病院、済生会中央病院、横浜市立大学附属市民総合医療センター、横浜労災病院、平塚市民病院、山梨県立中央病院
救急科と外科のダブルボードを目指したい方へ!
新しい専門医制度においても、ダブルボードを目指すことは可能です。東部病院の救急科と外科には、ダブルボードを目指す専攻医が常時4~6人程度在籍しており、本邦で最もダブルボードを取得するためのサポート環境と実績を有していると自負していますので、ダブルボードを目指したい方は、是非、東部病院での研修をご検討下さい。
治安が良く、交通事故も急激に減少している日本では、従来の外傷外科(Trauma Surgery)のみを実践していくことは容易くありませんが、米国から発祥して本邦にも広がり始めている“Acute Care Surgery”という、Trauma Surgery, Emergency General Surgery, Surgical Critical Careを包括した新しい急性期外科の概念を実践していくには、本邦では救急科と外科のダブルボードの取得が最適と思われます。出血性ショックのように秒単位・分単位で刻一刻と変化する生理学的な破綻に迅速に対応できる能力を身につけた上で、解剖学や病理学を土台とする系統的な一般外科学を学ぶことで、重症多発外傷や、重度の敗血症性ショックを伴う急性腹症等への対応はもちろん、ダメージコントロール手術やOpen Abdomen(腹部開放療法)、ハイブリッドERなどの特殊な戦略や戦術を駆使しつつ最適な決断と手技を実践する実力が身につくはずです。
また、未確定ではありますが、Surgical Critical Careを学んだ証となる集中治療専門医は、救急科、麻酔科または小児科専門医のサブスペシャリティ領域に認定される見込みです。残念ながら外科専門医のサブスペシャリティ領域には認定されない見込みですので、外科単独ではなく、救急科と外科のダブルボードを取得して、さらに集中治療専門医の取得を目指すことが望ましいと思われます。集中治療専門医取得に必須である12週間連続のICU専従歴も、東部病院では救急科の専門研修期間中に達成できます。
新専門医制度の開始後、救急科と外科のダブルボードの取得には各プログラムに3年、合計6年の期間が必要ですが、その6年間を分断せず、一貫したコンセプトの基で研修を行えることが東部病院の強みです。済生会神奈川県病院に設置された神奈川県交通救急センターの時代から、50年以上もの長きにわたって、外科と救急が一体となった診療を実践しているため、現在の東部病院の救急科と外科も、自然に一体となった強固な連携体制が築かれています。例えば、救急科にはダブルボードを有する指導医が5名在籍し、毎週の外科カンファレンスに救急科の医師も参加しています。さらに外科専門研修プログラムの専攻医は、数ヶ月毎に消化器外科・乳腺外科・血管外科と同様に救急外科をローテートしますが、この救急外科研修は、前述のダブルボードを取得している指導医の下で行われます。
なお、外科の専門研修プログラムは原則として3年連続ですが、救急科の専門研修プログラムは、ダブルボード取得を念頭に、中断と再開が認められていますので、ダブルボードを目指す6年間のプログラムには、下記のような4パターンがありえます。どのパターンにも一長一短はありますので、各専攻医の志向などを考慮しながら選択することになります。なお、パターンDに関しては、まずは外科プログラムに応募して頂く必要がありますので、ご注意下さい。
1年目 |
2年目 |
3年目 |
4年目 |
5年目 |
6年目 |
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パターンA |
救急科 |
救急科 |
救急科 |
外科 |
外科 |
外科 |
パターンB |
救急科 |
救急科 |
外科 |
外科 |
外科 |
救急科 |
パターンC |
救急科 |
外科 |
外科 |
外科 |
救急科 |
救急科 |
パターンD |
外科 |
外科 |
外科 |
救急科 |
救急科 |
救急科 |
東部病院では、2018年の1年間で、予測生存率(Ps)が50%未満の重症外傷患者を17名救命し、20%未満という極めて救命困難な患者を5名も救命しています。このような優れた成績も、ダブルボードを取得している救急外科医を核として、救急科と放射線診断科のダブルボードを取得している2名の指導医を中心とした緊急IVR体制や、年間約50例のECMOを実践する充実した集中治療体制が整っているからです。ダブルボードを目指したい方は、是非、我々と一緒に、済生会横浜市東部病院で研修をしましょう‼︎
参考:外科と救急科のダブルボード取得後に目指す資格等
集中治療専門医、消化器外科専門医、外傷専門医、Acute Care Surgery認定外科医
日本腹部救急医学会腹部救急認定医・教育医など
募集要項
・定員:5人
・応募期間:決まり次第お知らせします